「今日もご飯を食べない」
「このままだと栄養はどうなるんだろう」
「いつかは食べられるようになる?」
我が子がご飯を食べず、好き嫌いが多いと心配になりますよね。
「市販のおやつなら食べるのに、ちゃんとした食事は食べなくて困る」という声もよく聞きます。
その気持ち、すごくよくわかります。
私自身もそうでした。
私には発達障害のある娘がいます。
看護師として医療的な知識はあっても、自分の子どもの偏食には長いこと悩まされてきました。
今も、現在進行形で試行錯誤の毎日です。
この記事では、発達障害の子どもに多い「偏食」を医学的な視点で解説し、我が家で実際に実践してきたアプローチ方法を紹介します。
「うちだけじゃないんだ」と思いながら読んでもらえたら嬉しいです。
偏食とは?発達障害との関係

偏食とは、食べられるものの種類や量が極端に偏っている状態のことです。
子どもの偏食自体はよくあることですが、発達障害のある子どもは偏食の割合が高いことが知られています。
これは「わがまま」でも「育て方の問題」でもなく、発達障害の特性(感覚過敏やこだわりなど)が食べることを難しくしているためです。
偏食があるから発達障害、ということでもありません。
ただ、理由を知ると対応の方向性が見えてきます。
次の章で、その原因を詳しく見ていきましょう。
発達障害の子が偏食になる3つの理由

発達障害のある子どもに偏食が多いのには、ちゃんと理由があります。
「食べたくないわけじゃない、でも食べられない」そういう状態であることを、まず知っておいてほしいのです。
理由① 感覚過敏―五感のアンテナが敏感すぎる
味・匂い・食感・見た目・温度など、食べることには五感のほぼすべてが関わっています。
発達障害のある子どもは、これらの感覚の受け取り方が異なり、私たちが「少し気になる程度」と感じる刺激が、その子には耐え難いほど強く伝わっていることがあります。
「ケチャップが少しかかっているだけでだめ」
「匂いで食欲がなくなる」というのも、わがままではなく感覚過敏によるものです。
理由② こだわり―一度「無理」と学習したら覚え続ける
一度「気持ち悪かった」という経験をすると、その食べ物への「無理」がなかなか上書きされません。
また「このお皿でなければだめ」「おかずがご飯に触れていたらだめ」というようなルールへの強いこだわりも、偏食に深く関わっています。
「昨日まで食べていたのに突然食べなくなった」のも、パッケージや盛り付けの微妙な変化を「別のもの」と判断したことが原因のことがあります。
理由③ 言語化の難しさ―「嫌な理由」が自分でもわからない
「なんで食べないの?」と聞いても「わからない」としか答えられない。
それは説明する気がないのではなく、不快感を言葉にする力がまだ育っていないからです。
口腔機能の発達がゆっくりな場合、うまく噛めない・飲み込みにくいという問題が偏食として表れることもあります。
「食べない」という行動の裏に、本人も説明できない「理由」があることを覚えておいてほしいと思います。
看護師ママが実践してきた偏食へのアプローチ

原因がわかったところで、ではどうすれば良いのでしょうか。
我が家で実際に実践してきたアプローチ方法を紹介します。
偏食へのアプローチ方法は子どもの数だけあり、「これをやれば必ず食べるようになる」という魔法はありません。
「これが正解」という一本道はなくて、子どもの特性に合わせながら、試してみることを繰り返すことが、偏食との付き合い方の現実です。
試してみる際の道しるべになるといいなと思います。
アプローチ① スモールステップ法―「食べる」をゴールにしない
「一口だけでいいから食べてみて」という声かけは、実はあまり効果がないことが多いです。
「一口」ですら、感覚過敏のある子には「ものすごく大きなチャレンジ」だからです。
スモールステップのポイントは、「食べる」をゴールにしないこと。
STEP1:食卓に出す(存在することに慣れてもらう)
STEP2:手で触ってみる
STEP3:匂いを嗅いでみる
STEP4:口に持っていってみる(食べなくていい)
STEP5:舌の先に少しだけ触れてみる
STEP6:一口食べてみる
このように、小さな1歩を積み重ねていくのです。
STEP1で泣かなくなれば、それもひとつ立派な前進です。
そして、声かけも大切になります。
お皿に乗ったものを指して「これがまだ残ってるよ」と言っていたのを、「これは食べたんだね」に変えたら、娘が次々と食べ始めたことがありました。
「見てくれている」という安心感が、次の一口の力になることがあると学んだ出来事でした。
食べられないことではなく、「できたこと」に注目するポジティブな声かけをぜひ試してみてください。
アプローチ② 形・見た目・食感・温度を変える作戦
同じ食材でも、形や調理法を変えるだけで食べられることがあります。
刻む・すりおろす・混ぜ込む
にんじんやほうれん草を細かく刻んでハンバーグや卵焼きに混ぜ込む等の方法です。
視覚的な拒否反応をかわせることがあります。
ただし「混ぜるな」派の子には逆効果になることもあるので、子どもの反応を見ながらすることをおすすめします。
食感を変える
ゆでる・炒める・蒸す・揚げるで食感は大きく変わります。
生のにんじんは無理でも、シチューでとろとろになったものは食べられた、という子はよくいます。
逆に、素揚げにするとパリッとして食べられたというケースも。
見た目を整える
食材が触れているのが嫌な子には仕切りのある食器が有効です。
一方で、デコレーションを増やすと「知らないもの感」が強くなることも。
その子が「安心する見た目」を探っていく作業です。
温度を変える
熱いものが嫌なら少し冷ます、冷たいものが苦手なら常温に近づける。
温度は調節しやすいので、まずここから試してみるのもおすすめです。
甘味は温度に依存することもあるため、冷ますことで甘味がすっきりし食べやすくなることもあります。
アプローチ③ 台所育児―食べる前から食材と友達になる
感覚過敏がある子どもにとって、「知らないもの」「見たことがないもの」への警戒心は非常に強いと想像されます。
だったら、食べる前の段階から食材と関わってみる、それが台所育児の発想です。
野菜を一緒に洗う、食材を触ってみる、切るのを手伝ってもらう、鍋をかき混ぜる。
「食べる」という行為のずっと手前から食材に親しんでもらうことで、食卓に出てきた時の「知らないもの感」が薄れていきます。
自分が関わって作ったものは、食べてみようという気持ちが生まれやすくなります。
うちでは、「ミニトマトのヘタを取る」「切った野菜をお鍋に入れる」というところから始めました。
食べなくていい、ただ触ってみるだけ。
それだけでも、少しずつ「怖くないもの」になっていく感覚がありました。
アプローチ④ お弁当箱に入れたら食べる作戦
これは実際にやってみて「なんで!?」と思った経験なのですが、いつもの食卓では全く食べないものが、お弁当箱に詰めて出したら食べた、ということがありました。
「お出かけと結びついた特別感」「食材同士が区切られている安心感」「非日常」など、理由はいくつか考えられます。
週に1度「今日はお弁当の日!」として試してみるだけでも、意外な突破口になるかもしれません。
アプローチ⑤ 思い切って、諦めてみる
これが私の正直な結論です。
試せることは全部試して、それでも食べないものは食べない。
「諦める」というのは「もう何もしない」ではなく、「今の段階ではこれが限界で、それでいい」と受け入れることです。
食事の時間が毎日の戦場になると、食卓そのものが「嫌な場所」になります。
そうなると、すでに食べていたものまで食べにくくなることもあります。
笑って食べられる時間が一日一回あるほうが、長い目で見ると食べられるものが増えていくことが多いのです。
「今日も食べてくれなかった」を笑いごととして丸ごと受け入れてしまう。
そのくらいの意識にシフトしていくことをおすすめしたいと思っています。
これだけは注意してほしいこと

偏食がある子どもは、特定の栄養素が不足しやすい状態にあります。
食べなくても仕方ない、諦めてもいい、とお伝えしましたが、不足すると困りごとを強めてしまう栄養素もあるのです。
特に注意してほしい:鉄分不足
偏食のある子どもで最も不足しやすく、かつ行動面への影響が大きいのが鉄分です。
鉄はドーパミン・セロトニンという神経伝達物質の生成に関わるため、不足するとイライラや癇癪が増えたり、集中できなくなったりすることがあります。
発達障害の特性そのものが悪化するわけではありませんが、もともとの困りごとをさらに強めてしまうことがあるのです。
発達障害の診断がない子でも、鉄分不足で似たような症状が出ることもあります。
こんな様子が続いていたら要注意
- 以前より癇癪の頻度や強さが増した
- 顔色が青白い、唇の色が薄い
- 氷をよく食べたがる
- やたら疲れやすい、ぐずりが増えた
食事から補えない場合は、子ども向けの鉄分サプリや栄養補助食品を使うことも立派な選択肢です。
気になる症状があれば、かかりつけの小児科で血液検査を相談してみてもいいでしょう。
そのほかの栄養素について
鉄分以外にも、偏食が続くと不足しやすい栄養素があります。
症状が出たからといってその栄養素が不足していると断言できるものではありませんので、参考程度に知っておいてください。
亜鉛:味覚に関わる栄養素で、不足すると「何を食べてもおいしくない」という状態になることがあります。
そうなると食への興味がさらに薄れ、偏食が悪化するという悪循環につながりかねません。
カルシウム:神経伝達に必要な栄養素で、慢性的に不足するとイライラ感や集中力の低下が出ることがあると言われています。
ただし、食事からの摂取不足ですぐに影響が出るわけではなく、長期的な視点で意識しておく栄養素です。
ビタミンD:骨の発育に不可欠なほか、気分の落ち込みや免疫機能との関連も示唆されています。
日光を浴びることでも生成されますが、偏食がある子は食事からの摂取も少なくなりがちです。
タンパク質:体と脳の発達に不可欠で、神経伝達物質の材料にもなります。
肉・魚・卵・乳製品を食べない傾向がある子は不足しやすく、成長や集中力にも関わってきます。
これらはすべて「何かを食べなかったから悪い」ということではありません。
「食べないもの」ではなく、目の前の我が子の様子を観察し、必要な時にはかかりつけ医に相談することが、最善の一歩です。
こんな時は専門家の手も借りよう

一人で抱え込まないのが、偏食との付き合い方でもあります。
こんな状態が続くときは、専門家の力を借りることを考えてみてください。
相談するタイミングの目安
「様子を見る」か「相談する」か迷ったとき、判断の基準にしてほしいのは食べ物の種類の数ではなく、子どもの様子です。
- 体重が増えていない、または減っている
- 急激に食べられるものが減った、食事をほとんどしない時期が続いている
- 癇癪や落ち着きのなさが急に増した
- 氷を食べたがる、顔色が青白いなど鉄分不足のサインがある
- 食事の場面で強い不安・恐怖・パニックが起きる
- 集団生活(給食など)への参加が著しく難しくなっている
どこに・誰に相談すればいい?
「相談したいけどどこにいけばいいの?」という迷いも多いと思うので、専門職ごとの役割を以下にまとめました。
かかりつけの小児科:まず最初の相談窓口として最適です。
体重・成長の確認や血液検査もここで相談できます。
「偏食が気になる」と伝えるだけで十分です。
管理栄養士:不足しやすい栄養素と補い方を、子どもの食事内容に合わせて個別に提案してくれます。
病院の栄養相談窓口や自治体の保健センターで相談できることがあります。
作業療法士(OT):感覚過敏の評価と、段階的に慣れていくためのアプローチを専門的に行います。
感覚の受け取り方そのものに働きかける「感覚統合療法」を行っているところもあります。
言語聴覚士(ST):うまく噛めない・飲み込めないという口腔機能の問題が偏食の背景にある場合に有効です。
臨床心理士・公認心理師:食べることへの強い不安や恐怖が背景にある場合、行動面・心理面からサポートしてくれます。
親向けのペアレントトレーニングを提供しているところもあります。
なお、食べられるものの極端な制限に加えて、体重の減少や強い不安・恐怖が伴う場合は、小児科や児童精神科への相談も有効な場合があるので、子どもの様子に応じて相談してみてください。
「そのうち治るよ」への違和感―同じ親として思うこと

「偏食なんて大きくなれば自然と治る」
「好き嫌いが多い子は親の作り方の問題」
「食べさせないから悪い」
こういう言葉、一度は言われたことがあるのではないでしょうか。
確かに、成長発達に伴う一時的な偏食であれば、成長に伴って食べられるものが増えていく子もたくさんいます。
でも発達障害の特性が絡んでいる場合、「そのうち治る」という保証はなく、成人してもずっと偏食が続く人も珍しくありません。
「治る」を前提にした言葉が、「何でまだ治らないんだろう」という親の焦りを生む呪いの言葉になることもあるのです。
「育て方の問題」という言葉は、もっとしんどい言葉です。
偏食はわざとでも、育て方が悪いからでもない。
ちゃんと原因があることも分かっているのに、毎日作っている食事を食べてもらえなくて、そのうえ「あなたのせい」という言葉をもらったら、傷つくのも当たり前です。
私は看護師として、感覚過敏やこだわりのメカニズムを説明する立場のこともあります。
自分の親から「育て方が悪い」「お前のせいだ」と言われたこともありました。
偏食のメカニズムは知っていても、まったく役に立ちませんでした。
自責して、ふさぎ込んでしまった時期もあります。
だからこそ、「あなたは悪くない」と伝えたいのです。
今日も食べてくれなかった、また同じものしか食べない、それは全部誰かのせいではないのです。
まとめ―笑っていられれば、それでいい

偏食のある子どもを育てることは、本当に根気のいることです。
工夫して、試して、食べてくれなくて、また工夫して。その繰り返しです。
でも、思い切って諦めるのもひとつの方法なのです。
「食べさせること」よりも、子どもが笑って食卓にいられることを優先していい。
子どもにとっては、「栄養満点食べること」よりも「ママが笑ってくれること」のほうが価値があることかもしれません。
食べられるものが少なくても、愛されて育った子は育ちます。
今日も食卓を用意したあなたは、それだけで十分すぎるくらい頑張っています。
我が家の娘も感覚過敏があり、偏食もありましたが、小学生になった現在は、幼児期よりも食べられるものが増えました。
娘がクッキーを食べられるようになった話は、別記事でご紹介します。
毎日育児、お疲れ様です。
この記事を参考に、ひとつでも今日から試してみてください。


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