公園で楽しく遊んだ後、「もう帰るよ」がまったく通じない。
Youtubeを見始めるとやめられず、注意したら今度は大癇癪…。
こんな毎日、正直しんどいですよね。
私も同じでした。
看護師として発達障害の知識はあるつもりでも、我が子相手になるとうまくいかないことばかりでした。
この記事では、
- なぜ切り替えが苦手なのか
- 発達障害との関係
- 我が家で実践している声かけの工夫
を、実体験を交えて紹介します。
なぜうちの子は切り替えられないの?発達障害と「切り替え苦手」の関係

切り替えが苦手なのには、発達障害の特性が関係していることがあります。
- 見通しを立てるのが苦手
- ASDの特性~こだわりの強さ
- ADHDの特性~衝動性・過集中
- 環境変化への対応が苦手
これら4つの理由をわかりやすく紹介します。
①見通しを立てるのが苦手
発達障害のある子どもは、「次に何が起こるか」を頭の中でイメージすることが苦手なことが多いです。
例えば、公園で遊んでいるとき、発達障害のある子どもは「今この瞬間の楽しさ」に全力で集中しています。
そこに「そろそろ帰るよ」という言葉が飛び込んでくると、まるで突然割り込まれたように感じ、パニックや癇癪につながることがあるのです。
さらに、時間の感覚が曖昧なことも切り替えを難しくする一因です。
「あと10分」と言われても、その10分がどのくらいなのかわからないことがあります。
私たちは過去の経験から「このくらいかな」と自然に見当をつけられますが、それ自体がとても難しいのです。
切り替えられないのは、わがままでも聞いていないわけでもありません。
見通しを立てられないから、切り替えられないのです。
②ASDの特性~こだわりの強さ
自閉スペクトラム症(ASD)の特性のひとつに、こだわりの強さがあります。
ASDのある子どもは、目の前のことに深く集中するあまり、「次に何をするか」へと意識を向けることが苦手です。
ひとつのことに集中しているとき、そこに「もうおしまいだよ」という言葉が飛び込んでくると、脳では突然システムエラーが起きたような混乱が生じます。
これはASDのある子どもの脳が、予定外の変化をとても大きなストレスとして受け取りやすいためです。
前頭前野という「切り替えや感情のコントロールを担う部分」がうまく働きにくく、「ちょっとした変更」が私たちの予想以上の不安やパニックにつながることがあります。
「なんでこんなことで…」と感じてしまうかもしれませんが、子どもにとっては予想以上の大変なことが起きているのです。
③ADHDの特性~衝動性・過集中
注意欠陥多動性障害(ADHD)の特性として、衝動性と過集中があります。
ADHDのある子どもは、好きなことに強く集中すると、周りの声が入りにくくなることがあります。
ゲームや動画にはまり込んで、声をかけても気づかない…あの状態です。
この過集中の状態に入れば入るほど、切り替えはより難しくなります。
また、ADHDの特性である「衝動性」も切り替えの難しさに関係しています。
「やめたくない」という気持ちが衝動的に行動に出てしまい、感情にブレーキをかけることが難しいのです。
これが癇癪や強い拒否反応として現れることがあります。
さらに、ADHDではワーキングメモリ(作業中の情報を一時的に保持する脳の機能)が小さい傾向があります。
「今やっていることをやめる」「次の行動に移る」というのは、私たちには簡単に思えますが、脳の中では同時に複数の命令を処理する作業です。
ワーキングメモリが小さいと、この処理が追いつかずにパニックになることがあります。
「切り替えて」の一言の裏で、子どもの脳はフル回転しています。
「なんでこんな簡単なことができないの?」と思ってしまう場面でも、子どもの中では必死に処理しようとしているのかもしれません。
それを知っているだけで、少し見方が変わりませんか?
④環境変化への対応が苦手
発達障害のある子どもの中には、感覚過敏を持つ子も多くいます。
光・音・触覚などの外部刺激を過剰に受け取りやすく、私たちが「普通」と感じる環境でも、強いストレスになることがあります。
そのため、見慣れない場所・聞いたことのない音・予期しない出来事など、環境が少し変わるだけで脳がフル稼働してしまいます。
「切り替えて」という要求が加わると、処理しきれずにパニックや拒否反応が起きるのです。
切り替えを拒否するのは、子どもなりの自己防衛でもあります。
「わがまま」ではなく、自分を守るための精一杯の反応なのです。
やってしまいがちなNG対応

切り替えてほしいのに、癇癪や拒否をされると、難しいんだなとわかってはいても、対応に困ることがありますよね。
ここでは、ついやってしまいがちだけどNGな対応を3つ紹介します。
①強引に切り替えさせる
切り替えができない子どもを、強制的に次の行動に移させるのは、逆効果になることがあります。
たとえば、スーパーで泣きわめく子を引きずって連れていく、公園から帰れず泣いている子を無理やり抱えて帰る。
こういった場面、経験したことがあるママも多いのではないでしょうか。
しかし、気持ちが整理できていない状態で強制的に動かされると、子どもはさらにパニックになります。
「切り替えさせたい」という気持ちは当然ですが、力づくの対応はかえって逆効果です。
さらに怖いのは、トラウマになってしまうリスクです。
力でかなわない大人に無理やり連れていかれた経験は、子どもに強い恐怖と不安を残すことがあります。
次に同じ場面がきたとき、「帰るよ」の一言だけでパニックになってしまう。
そんな悪循環につながることもあるのです。
私もまさに、やってしまっていたことがあります。
公園の駐車場で動けなくなった我が子を、「駐車場は危ないから」「周りの迷惑になる」と焦って、無理やり抱えて帰ったことがありました。
そのあと、同じような場面があった時に「帰ろう」と声をかけた瞬間、子どもは一瞬でパニックになっていました。
子どもが落ち着いてから話を聞くと、「怒られると思って怖くなった」と言ったのです。
無理やり連れて帰った日のことが、声をかけられただけで怖くなるトラウマになっていたんだと気づき、胸が痛くなりました。
②感情的に叱る
はじめは優しく声をかけていても、何度言っても届かないと感じると、ついイライラしてしまいますよね。
しかし、感情的に叱ることはあまり効果的とは言えません。
切り替えができない状態の子どもの脳はすでにフル回転していて、言葉の意味よりも声のトーンや相手の表情を先に感じ取ってしまうからです。
たとえばYoutubeに夢中なとき、大きな声で叱られると「怒られる」という恐怖が先に来て、脳がフリーズしてしまいます。
そうなると、「次の行動へ移る」どころか、何もできない状態になってしまうのです。
さらに、繰り返し叱られることで「自分は悪い子なんだ」という自己嫌悪に陥る子もいます。
子どもの脳は「どうすればよかったのか」を学ぶより、「怒られた」という記憶のほうが鮮明に残りやすいのです。
特に発達障害のある子どもは、言葉の理解や感情の読み取りが苦手なことがあります。
そのため、叱られても「なんでかわからないけど怒られた」という経験になりやすく、次の行動につながる学習にならないことが多いのです。
③急な予定変更を強いる
あらかじめ決めておいた予定を変更することにも注意が必要です。
発達障害のある子どもは見通しを立てることが苦手で、急な予定変更でパニックになりやすいためです。
たとえば「公園のあとは家に帰る」という予定が、急に「ちょっとお買い物して帰ろう」に変わったとします。
私たちには些細な変更でも、子どもの脳はすでに「家に帰る」という流れで準備しています。
その準備を突然崩されると、頭の中を一から組み替えなければならず、それだけで大きな混乱につながるのです。
「たったそれだけのことで?」と思うかもしれません。
でも、子どもにとって予定の変更というのは、安心できる地図を突然奪われる感覚なのです。
発達障害の子に届く!声かけのコツ5選

切り替えが苦手な子どもが動きやすくなるには、ちょっとした声かけの工夫が役立ちます。
すぐに実施できるよう、ポイントを5つにまとめて紹介します。
①事前にイメージを作っておく
子どもの脳は、「どれだけ具体的に想像できるか」で切り替えのスピードが大きく変わります。
頭の中にあらかじめ「次の行動」のイメージがあると、切り替えの場面でスムーズに引き出しやすくなるからです。
たとえばお出かけの前に「公園で遊んで、そのあとスーパーに寄って帰ろう」と話しておくと、子どもの脳はその流れを事前にインプットできます。
「晴れたら公園→買い物」「雨ならショッピングモール」というようにパターンをいくつか伝えておくと、急な変更にも対応しやすくなります。
写真や動画を使ったイメージ作りも効果的です。
初めていく場所の写真を事前に見せておくと、映像として記憶に残るため、当日も比較的落ち着いていられやすくなります。
さらに、わくわくする要素を加えるとイメージが定着しやすくなります。
同じ「次の行動」でも、楽しいイメージがあるほど脳に残りやすいからです。
特に効果的なのが、苦手な行動をゲーム化することです。
我が家では宿題に向き合うとき、「タイムトライアル宿題」や「どれだけ丁寧に書けるかゲーム」というような呼び方をします。
勉強や宿題というよりも、「ゲーム」「ママと一緒に」の言葉をつけ加えると、子どもの食いつきが全然違います。
②指示は具体的・簡潔に
声をかけるとき「具体的に・簡潔に」を意識すると、子どもの脳に言葉が届きやすくなります。
伝える情報が多いほど脳の処理に時間がかかり、行動に移すまでに時間がかかってしまうからです。
たとえば「片付ける」という言葉は、子どもにとって「何をどうすればいいか」を自分で考えなければならない曖昧な指示です。
「まずおもちゃを箱に入れよう」と具体的に伝えることで、脳の処理がスムーズになり行動に移しやすくなります。
「遊び終わったら片付けておでかけしよう」と一度に伝えるより、ひとつずつ順番に伝える方が断然効果的です。
また、発達障害のある子どもは「暗黙の了解」が苦手で、言葉の意味をそのままの意味で受け取る特性があります。
「出かけるよ」の一言に「片付ける・ジャンパーを着る・荷物を準備する」がすべて含まれているとは、なかなか結びつかないのです。
最初はひとつずつ一緒に確認しながら進めていくことで、やがてルーティンとして身につき、自分でできることが少しずつ増えていきます。
③選択方式
「自分で次の行動を選ぶ」という経験も、行動の切り替えを促すのに効果的です。
人は自分で決めたことに対して脳が働きやすくなります。
「やらされている」より「自分で選んだ」という感覚が、行動への第一歩となるからです。
たとえば朝の支度のとき、「先に朝ごはんにする?着替えにする?」と具体的な選択肢を提示して選んでもらいます。
選び終わるころにはすでに頭の中にイメージが出来上がっているので、①で紹介した「事前にイメージさせる」効果も同時に得られます。
特に発達障害のある子どもは脳の処理に時間がかかるため、この「自分でイメージする時間」がとても大切です。
さらに、自分で選んで行動できた経験は自信につながります。
小さな成功体験を積み重ねることで、少しずつ自分から動けるようになっていきます。
④目を合わせる・体に触れる
意外と見落としがちですが、目を合わせること・体に触れることはとても大切なコツです。
何かに全力で集中している子どもは、「自分に話しかけられている」と気づいていないことがあります。
我が家でよくあるのは、Youtubeに夢中な子どもに、洗い物をしながら声をかけてしまうパターンです。
親は家事の途中、子どもは動画に夢中で、言葉がまったく届かない状態です。
そんなときはまず、肩や背中にそっと触れて注意を少しだけこちらに向けます。
そのうえしっかり目を合わせて話しかけると、言葉が届きやすくなります。
親や親しい人のタッチは子どもに安心感を与えます。
「見てくれている」と感じられるだけで、案外すんなり話を聞いてくれることが多いのです。
⑤共感の声かけ
私が最も大事にしていることは、「共感」の声かけです。
人は「わかってもらえた」と感じると、自分から動こうという気持ちが生まれやすくなります。
親が共感するだけで、子どもの脳は「指示された」モードから「自分でやりたい」モードへと切り替わりやすくなるのです。
たとえば「公園から帰りたくない」と言ったとき、まず「公園楽しいもんね」「お天気良くて気持ちいいもんね」と子どもの目線で共感します。
「帰りたくない気持ちを言葉で教えてくれてありがとう!」と伝えたりもします。
一言目を共感の言葉にするだけで、子どもは「わかってくれた」と感じてたくさん気持ちを話してくれたりします。
帰りたくないと言ったから帰らなくていい、というわけではありません。
共感の一言を最初に添えるだけで、次の話をちゃんと聞いてくれるようになるのです。
「共感」は私にとって魔法のような一言です。
切り替えをサポートする便利なツール3選!

声かけと合わせて、便利なツールを取り入れるとさらに効果的です。
我が家でも実際に使っているものを3つ紹介します。
①時っ感タイマー
発達障害のある子どもは時間感覚が希薄で、「あと10分」がどのくらいか体感しにくいことがあります。
そんなときに役立つのが「時っ感タイマー」です。
アナログ式のキッチンタイマーのような見た目で、時間の経過とともに色のついた部分が減っていくため、残り時間が目で見てわかるのが特徴です。
「あと少し」が視覚的に伝わるので、切り替えの予告としても使いやすいです。
我が家では自閉スペクトラム症の診断を受けた際に主治医から勧められて使い始めました。
使い続けることで、少しずつ時間の感覚が身についてきます。
数字がまだ読めない時期には、アナログ時計の数字の横にフルーツのイラストを貼って、「長い針がイチゴになったら終わりだよ」と伝えていたこともありました。
時っ感タイマーを使う前の話ですが、これも時間を視覚化するという意味では同じ発想です。
市販品がなくても、身近なもので工夫できますよ。
やることチェックリスト
朝の準備など、やることが多い場面で活躍するのが、やることチェックリストです。
我が家では毎朝の支度に使っています。
やることが一覧になっていて、完了したらスライドして×から〇に変えていく仕組みです。
どこまで終わったかが一目でわかるため、次の行動へ切り替えやすくなります。
〇が増えていくのがゲーム感覚で楽しく、子どもが自分から進んで準備するようになりました。
ホワイトボード
チェックリストと似た使い方ですが、ホワイトボードはより自由度が高いのが特徴です。
真ん中に線を引いてマグネットを左右に動かすことで、やること・できたことを可視化できます。
また、一日の予定を書いておくこともできるので、「晴れたら公園→買い物」「雨の日はショッピングモール」といったパターンを絵カードで示すこともできます。
チェックリストは既製品、ホワイトボードは自作アレンジしやすい点が違いです。
お子さんの好みや生活スタイルに合わせて選んでみてください。
「正直しんどい…」切り替えに毎回付き合う親のメンタルケア

切り替えが苦手な子どもへの対応は、予想以上にエネルギーを使います。
頭では「仕方ない」とわかっていても、何度も同じように癇癪や拒否反応をされると、疲れ切ってしまうこともありますよね。
私自身も、余裕がなくて怒鳴ってしまったことや、「しつけが悪い」と言われて落ち込んだことがありました。
だからこそ、子どもの対応と同じくらい、親自身の心を守ることも同じくらい大切だと思っています。
完璧にやらなくていい
発達障害の子どもへの対応を調べると、たくさんの情報が出てきます。
でも実際の育児では、毎回理想通りに対応できるわけではありません。
時間に追われている日もあれば、親自身に余裕がない日もあります。
親も人間なので、感情が出ることは当然です。
看護師として患者さんと関わる中でも感じてきましたが、感情を見せること自体が悪いわけではありません。
むしろ子どもが「ママにも気持ちがある」と学ぶきっかけになることだってあります。
大切なのは、怒ってしまったあとにどう向き合うかだと思っています。
「さっきは怒りすぎてごめんね」その一言だけで、子どもとの関係は修復できます。
昨日は怒ってしまったけれど、今日は1回怒らずに対応できた。
それだけで、昨日より一歩前に進んでいます。少しずつで十分なのです。
支援が必要なのは親の方
発達障害のある子どもには、療育・保育園・学校・病院・自治体の保健師さんなど、さまざまな支援先があります。
でも、親自身が相談できる場所を見つけることは、意外と難しかったりします。
親は子どもの支援に必死になり、自身の不調に気づけないこともあります。
「周りに理解されない」「相談してもわかってもらえない」と孤独を感じながら、一人で頑張り続けている親も少なくありません。
発達障害児育児は、想像以上に心も体も消耗します。
夫婦関係がすれ違ってしまったり、外出すること自体が怖くなってしまったりすることもあります。
療育や病院、保健師さんとの面談では、子どもの相談だけでなく、親自身の気持ちも話して大丈夫です。
誰かに話すだけで少し心が軽くなることもあります。
相談することで、家族ごと支えようと動いてくれることも多いです。
子どもを支える親にも、支えてくれる存在が必要です。
一人で抱え込まないことも、大切な子育ての一つだと私は思っています。
まとめ|「切り替え苦手」はゆっくり育てていける

この記事では、切り替えが苦手な発達障害の子どもへの声かけのコツを紹介してきました。
切り替えができないのは、わがままでも聞いていないわけでもありません。
脳の特性上、本当に難しいことが起きているのです。
そのことを知っているだけで、子どもへの見方が少し変わるのではないかと思っています。
声かけのコツは、この5つです。
- 前もってイメージさせる
- 指示は具体的・簡潔に
- 選択方式にする
- 目を合わせる・体に触れる
- 共感の声かけ
どれかひとつでも、明日から試してみてください。
全部やろうとしなくて大丈夫です。
そして、うまくいかない日があっても、自分を責めないでほしいです。
私自身、今でも怒ってしまうことがあります。
看護師として知識があっても、我が子相手になると別な話です。
それでも、昨日より今日、今日より明日と、親子で少しずつ前に進んでいければそれでいいと思っています。
この記事を参考に、少しずつ試してみてください。

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