思い通りにならないと叩く子どもの行動に悩んでいませんか?
特に発達障害の特性を持つ子どもは、叩くことで気持ちや思いを伝えようとすることが珍しくありません。
子どもの叩く行動を見ると、痛みだけでなく、「将来が心配」「しつけがうまくいっていないのかな」と気持ちがしんどくなってしまうこともありますよね。
ここでは、子どもが叩いてしまう理由と、日常の中でできる関わり方について解説します。
発達障害の子どもが「叩く」4つの理由

発達障害は、脳の働き方の違いによって特性が現れると考えられており、それにより発達の凹凸ができるとされています。
発達障害の特性と「叩く」行動の関連を4つの視点でまとめました。
- 言葉で伝えられない
- 感情のコントロールが難しい
- こだわりやルールへの強い反応
- 刺激に敏感でストレスを感じやすい
このように、感情を言葉でうまく伝えられないことが日常のなかで頻発していることが原因です。
それでは、ひとつずつ詳しく見ていきましょう。
①言葉で伝えられない
発達障害のある子どもは、気持ちや思いを言葉でうまく伝えられず、「叩く」という行動につながることがあります。
2歳前後のいわゆるイヤイヤ期でも、言葉でうまく表現できないために、泣いたり暴れたりして「イヤ!」を伝える姿が見られます。
発達障害のある子どもの場合も、これと似たように言葉ではうまく自分の感情や状況を説明できず、「叩く」ことでわかってもらおうとするのです。
発達障害の子は同年齢の子どもと比べて言葉の習得が遅れる傾向があります。
言葉で伝えられない、表現できない気持ちが隠れていることがあるのです。
②感情のコントロールが難しい
子どもの脳はまだ発達の途中であり、感情をコントロールする力も未熟です。
特に発達障害を持つ子の場合、こだわりの強さや衝動性により、感情をコントロールすることが難しくなると言われています。
例えばADHD(注意欠陥多動性障害)の場合は衝動性、ASD(自閉スペクトラム症)の場合はこだわりが強いという特性があります。
これにより、発達障害の特性があると、感情のコントロールがより難しいのです。
一度感情が高ぶると、気持ちを切り替えることが難しい場合もあります。
療育等で訓練し、感情のコントロールの力をつけていくことが大切です。
③こだわりやルールへの強い反応
発達障害の中でもASD(自閉スペクトラム症)を持つ子どもは、こだわりが強かったり、自己流のルールを持っていることがあります。
自分の中で決められているルールやルーティンを崩すことができず、予想外の出来事への対応が苦手という特性も発達障害の特性の一つと言えるでしょう。
たとえば、今やるべきことではないことでも、そこにはその子なりの理由やルールがあり、「なぜダメなのか」が理解しにくいこともあります。
そのため、他者からやるべきことを言われてもできないということもあります。
自己流のルールやこだわりを持つ子にとって、予想外の出来事への対応は難しく、感情が爆発しやすいのです。
④刺激に敏感でストレスを感じやすい
発達障害の特徴の一つに、感覚過敏というものがあります。
これは、脳の過剰反応により起こると言われています。
光や音等の特定の刺激に対し過剰に感じてしまうため、周りの子に比べてストレスを感じやすいとされています。
環境によりストレスを強く感じ、感情がコントロールできなくなる要因にもなるため、イヤーマフやサングラス等で環境を整えてあげることも大切です。
叩く行動が起きやすいタイミングと背景

「叩く」行動は、言葉でうまく気持ちを伝えられず、感情がコントロールできないときに起きやすくなります。
では、叩くという行動が起きやすいタイミングや背景はあるのでしょうか。
「叩く」という他害行動は夕方や帰宅時間に起きやすいと言われています。
その背景として、以下のような要因が考えられます。
- 疲れがたまっている
- 我慢していた反動が出る
- 安心できる環境に戻って気持ちが緩む
例えば、外では問題なく過ごしていると思われる子でも、家に帰ってたまった疲れと向き合った瞬間に癇癪を起こすということもあります。
そのため、この時間帯は「問題行動」として捉えるだけではなく、子どもが頑張ってきたサインとして見ることも大切です。
なぜ家族にだけ叩くのか

「叩く」行為は、外では見られず、家族に対してだけ起こるケースも少なくありません。
この場合、子どもは外では気持ちを抑え、周囲に合わせて過ごしていることが多いと考えられます。
発達障害のある子どもは、苦手な刺激に耐えたり、こだわりやルールと向き合いながら、集団生活に適応しようと日々努力しています。
そのため、安心できる家に帰ると気が緩み、たまっていた疲れや感情が一気にあふれ、「叩く」という行動につながることがあるのです。
つまり、家族にだけ叩いてしまうのは、安心感や信頼の表れである側面もあるのです。
ただし、「家族だから叩いてもいい」というわけではありません。
安心できる関係の中でこそ、適切な気持ちの伝え方を少しずつ学んでいくことが大切です。
「叩く」行動をやめさせたいときにやりがちなNG対応

子どもに叩かれると、相手は子どもだとわかっていても、嫌な気持ちになりますよね。
そんな時にとっさにやりがちではあるけれど、間違った学習につながったり行動がエスカレートする可能性のあるNG対応を5つ紹介します。
①感情的に叱る
叩かれると、とっさに強い言葉で制止したり「ダメ!」と叱ってしまうことがあります。
しかし、感情的に強く叱ることはあまり効果的とは言えません。
叱られた怖さで行動を抑えることはできるかもしれませんが、「なぜダメなのか」を理解することにはつながりにくいと言われているためです。
感情が爆発している時の脳内はほとんどパニック状態に近く、言われた言葉を正しく理解することができないこともあります。
そのため、感情的に叱る、強い言葉で制止するといった対応は、根本の解決にはつながりづらいのです。
まずは落ち着くことを優先した関わりが大切です。
②無視をする
無視をしたり、笑って流したりする対応は、かえって行動をエスカレートさせる可能性があります。
「気持ちが伝わっていない」「わかってもらえない」と感じてしまうことがあるためです。
言葉でうまく気持ちを伝えられず叩く行動で現れている場合、「わかってもらわなきゃ」とより必死になるのです。
そのため、無視をすることは逆効果になる可能性があります。
③問い詰める
子どもの気持ち、伝えたいことをわかってあげようと、「どうしたの?」と何度も問い詰めてしまうこともあります。
言葉で伝えられない思いを言葉で聞き返しても、事態は変わらないことが多いです。
感情が高ぶっているときは、言葉を受け取る余裕がないこともあります。
例えば、「どうしたの?」と言葉をかけられているだけで、「ママは今私を叱っている。攻撃されている」と認識してしまうこともあります。
パニック状態の子どもに対し言葉で問い詰める対応は、時に誤った認識になってしまうこともあるのです。
④交渉する
ここで言う交渉は、「叩くのやめられたら〇〇あげる」等の取引のことです。
交渉をする言葉が脳に届いた場合、叩くのをやめることもあるかもしれませんが、これは一時的なもので、叩くのをやめさせる正しい方法ではありません。
なぜなら、「叩いたり暴れたりすれば何かが手に入る」「何か欲しいものがあるときは叩けばいいんだ」と間違った学習をしてしまうためです。
ちょっとしたことがきっかけで叩くようになってしまう可能性もあり、注意が必要です。
⑤やり返す
親も人間なので、叩かれると嫌な気持ちになり、とっさに叩き返したくなってしまうこともあるかもしれません。
しかし、叩き返すことは「叩かれたら叩き返していい」と学習してしまう可能性があり、逆効果になることがあります。
私自身も正直、叩き返したくなることもありました。
目の前で叩いてくる子どもは、伝えたいことを伝えられず苦しんでいる愛おしい我が子だということを忘れずに落ち着いて対応していけるといいですよね。
発達障害の子どもとどう向き合う?基本の対応方法

それでは、どう対応したらよいのでしょうか。
具体的な行動と、大切にしたい対応を紹介します。
①まずは安全を確保する
子どもが叩いてしまうときは、まず安全を確保することが第一優先になります。
周りが見えずパニックになっている場合、大きな怪我や思わぬ二次災害につながってしまうことがあるためです。
例えば、テレビなど大きな家具がある近くでは、手が当たったりしてテレビが倒れてきたり、キッチンにいる時は包丁など危険なものに手が伸びてしまう可能性もあります。
周囲に危ないものはないか、落ち着いてまずは環境を整えましょう。
②気持ちを落ち着かせる
次に、興奮した気持ちを落ち着かせることが大切です。
感情が高ぶったままでは言葉を正しく受け取ることが難しい場合があります。
まずは落ち着いた声で行動を止め、落ち着いた様子が見られたら、短い言葉で様子を確認してみましょう。
子ども自身が話せる状態かどうかも判断できます。
興奮している状態では言葉がうまく出てこないことも多く、すぐに気持ちを話せない場合もあります。
その時は無理に聞き出そうとせず、まずは気持ちが落ち着くのを待つことも大切です。
③気持ちを受け止める
気持ちが落ち着き少しずつ話ができるようになってきたら、否定せず話を聞きましょう。
親から見たら些細なことでも、子どもにとってみたら大きな理由に感じていることもあります。
「そんなことで」と思うことでも、否定せずまずは気持ちを受け止めます。
子どもが「無視せず話を聞いてくれた」「わかってくれようとしている」ということを認識できるだけで、感情が鎮まり少しずつ言葉で気持ちを表現しようとするきっかけになります。
④気持ちを代弁してあげる
時には、気持ちを代弁してあげることも効果的です。
言葉の習得がゆっくりな発達障害の子どもは、言葉で表現しようとしてもうまくいかないことがあります。
「嫌だったんだね」「寂しかったね」と気持ちを代弁してあげることで、「嫌だったときは嫌だったって言えばいいんだ」「これは寂しいっていう感情なんだ」と自身の状況を言葉で理解できるようになります。
子ども自身が自分の気持ちや状況を言葉で伝えられるようになることにつながるでしょう。
⑤落ち着いてから行動を振り返る
どうして叩いたのかの理由を聞いたり、何がダメだったのかを伝えるのは大切なことです。
しかし、興奮状態の時にその話をしても正しく認識できない可能性があります。
しっかり落ち着いてから状況を振り返り、どうしたら良かったのか話し合うことが効果的です。
何が嫌だったのか、どうしたかったのか。
どんな言葉で伝えたら良かったのか。
振り返ることで同じようなことがあったときに叩かずに言葉で伝えられるようになる可能性が高まります。
何度も経験していくことで徐々に行動が変わっていくので、何度も根気強く振り返りをすることが大切です。
大切なことその1:対応には一貫性を持つ
対応するときには一貫性を持つことも大切です。
親の対応がその都度変わってしまうと、子どもはどうすればよいのかわからなくなってしまいます。
例えば、すべてを限られた時間で対応するのが難しければ、振り返りは後でも良いのです。
時間を置いたほうが完全に気持ちが切り替わり、客観的に振り返ることができる場合もあります。
対応を曖昧にせず、一貫して伝えていくことが大切です。
大切なことその2:それでも難しい時には
冷静に簡潔な言葉で伝え制止しようとしても、叩くのをやめない場合もあります。
その場は落ち着いても、すぐに同じように叩いてしまうこともあります。
それは、必ずしも親のしつけや関わり方が原因とは限りません。
発達障害のある子どもは、一度強い感情に飲み込まれると、自分でコントロールすることが難しい状態になっているのです。
対応が難しいときには、無理をせず一度距離をとることも必要です。
親自身が落ち着くことで、結果的に子どもにも穏やかに関わりやすくなり、言葉が通じやすくなります。
すぐに改善しないように見えても、関わりを続けることで、少しずつ言葉で気持ちを伝えられるようになっていきます。
【体験談】我が家ではこうでした

我が家の6歳の長女は自閉スペクトラム症です。
長女も感情が爆発し叩いてしまうことがあります。
外ではいい子に見えるため、周囲に理解されにくく、「どうして私にだけ…」と悩んだこともありました。
ある日、落ち着いたあとに言ってくれた言葉で、気づかされたことがありました。
「怒られるって思ったら、ママが鬼に憑りつかれたと思うくらい怖く感じた。優しいいつものママに戻ってほしくて、鬼をやっつけたかった。苦しくて、早く落ち着きたかった」
この子はこの子なりに理由があって、ほとんどパニック状態で苦しんでいる。
叩く行動の裏には、怖さや苦しさがあるのだと気づきました。
すぐに変わるわけではありませんが、「ママはいつどんな時も味方だよ」と伝えながら、少しずつ関わりを続けています。
まとめ:叩く行動は関わり方で少しずつ変わる

発達障害の子どもが叩いてしまう背景には、言葉で伝えきれない気持ちや、感情コントロールが苦手なことがあります。
そのため、すぐにやめさせようとするのではなく、理由を理解し、落ち着いて関わることが大切です。
叩かれたときは感情的にならず、一貫した対応を心がけながら、子どもの気持ちに寄り添っていきましょう。
すぐに変化が見られなくても、関わりを続けることで、少しずつ言葉で伝えられるようになります。
焦らず向き合うことが、子どもの成長につながっていくでしょう。
すべてを完璧にはできなくても大丈夫です。
この記事を参考に、できることから少しずつ試してみてください。


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